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Falcom・軌跡シリーズの同人小説サイトです(;'ω')ン 主役はレンで、時期は零の軌跡後です。
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『漣の軌跡』


れん【漣】
 [音]レン [訓]さざなみ 
 1 さざなみ。
 2 涙が連なって流れるさま。



第一章  第一話 「レン・ブライトの午後」

 (1-1) 田舎街ロレント

その日の午後も、レン・ブライトは、ロレントの遊撃士教会支部の休憩室に居た。
何しろロレントでまともに動力ネットの端末が使える場所はここだけなのだ。
<<リベールの異変>>を教訓に、王国軍とギルトは協力して通信網の強化に取り組んだ。
その甲斐あって、田舎街ロレントでも、ギルト支部だけはZCF開発による最新無線通信端末が設置されている。

ギルトの端末はもちろん、レンはティータから回してもらったZCFの部品や、ヨルグ老人から貰った蛇製の機材、はたまたクロスベルの闇市から仕入れてきたエプスタイン最新アルゴリズムなどを合わせて、独自の端末を製作していた。
蛇の最新技術まで入っているので、ロレントの古びた支部内がある意味リベール国内で最も通信が発達している場所とも言えるのであった。

レンという小さな少女が、正遊撃士であるエステルとヨシュアと共にロレントに来て、約一ヶ月が経過した。
田舎街に突然やってきた、都会風に垢の抜けきった可憐な美少女。
洋服は贅沢に布を使ったお洒落な白いフリルのドレス。
ましてや、街の英雄カシウスとそのお転婆娘エステルが連れてきた少女である。
あっという間にレンはロレントの有名人になった。

レンも変に世慣れているものだから、ついつい愛想よくしてしまう。
街をあるけば、無邪気でおせっかいな住民にあれやこれやと話しかけられ、世話をやかれるのだった。

持ち前の感受性で、表面的な愛想だけはふるまえるものの、レンは正直とまどっていた。
人間の集団というものは苦手だったし、他人というものはレンにとって自分を傷つけるか、自分が傷つけるかその二種類の人間しか居なかったからだ。

何か違和感が拭えず、レンには優しいロレントの街はなんだかむず痒いものだった。
居た堪れずに、レンはついつい室内に閉じこもりがちとなってしまっていた。

エステルとヨシュアはロレントに帰ってきてからも、クロスベルに居た時以上に仕事に追われている。
ロレント自体はどちらかというと平和な地域だが、もはや二人は若くして期待される正遊撃士である。

リベールの国中どころか周辺諸国からも大きな依頼を受けることが多くなっていた。
カシウスも軍の建て直しや組織づくりに手がいっぱいで、ギルトに回せる仕事は容赦なくギルドへ回してくる。
はたまた、女王陛下や皇太女の信頼も厚く、その期待もあってギルドの仕事は膨れ上がっていた。

ただでさえ、クロスベル・エレポニア・カルバード方面共に情勢が深刻化している。
それに加えて、リベール国内もまだ一昨年の動力停止事件のトラブルから抜け出せていない部分もあり、どこにいっても人手の不足は深刻であった。

そういう事情もあり、シェラザードをはじめ、エステルやヨシュアも、リベール国内国外を飛び回っており、日中にロレントの支部内に滞在していることはほとんど無かった。
レンは、ティータと動力通信で打ち合わせをしながら、自分の開発環境を立ち上げていくことぐらいしかやることがないのだ。

もちろん、遊撃士の仕事についていくこともある。
だけど、レンは一般人から見ると子供である。
危険な場所に子供を連れて行くことを依頼人から咎められれば、エステルもヨシュアも困ってしまうことが多かった。
レンだって、別に遊撃士の仕事に大して興味はない。
あんなオツカイや雑用ばっかりの作業を楽しそうにしているエステルの方がどうかしている、と思っていた。

ロレント支部には、大抵の場合は受付を担当するくえないお姉さん・アイナが残っている。
受付の仕事も、何も依頼人が来た場合の対応だけが業務ではない。
各担当者から連絡を受けて、必要であれば増援指示や、優先順位の変更を決断する。
その他、お金のやり取り、仕入れた情報の整理、他支部との情報交換、本部の見解の確認、軍や政府の部署との調整などなど、戦闘以外の事務仕事はいくらでもあった。

人手が足りずに、緊急に対処しなければならない事態などが起これば、気が向いたらレンが手伝ってあげることもあったが、それはそれ。
レンも暇つぶしになるのであれば、些細な手伝いであっても嫌いではない。
たまには、身体を動かしていなければ、腕がなまってしまうというものだ。
運動がてら、という理由で緊急案件を片付けることも、それなりにはあった。

だが、緊急事態でもないと、子供のレンはむしろお邪魔虫になってしまうのだった。
レンは大人しく、『ロレント近代化プロジェクト』という個人的な目標を達成すべく、日々研究環境構築に勤しむのであった。
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