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Falcom・軌跡シリーズの同人小説サイトです(;'ω')ン 主役はレンで、時期は零の軌跡後です。
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(2-3) レーヴェの残した言葉

夕食の片付けを終えて、ほっと一息ついた頃、レンは自室にヨシュアを呼んで、パテルマテルとの通信を開いた。
「ごめんなさいね、もう寝ていたかしら。」
別にパテルマテルは睡眠が必要なわけではない。それでも充電のために、またはエネルギーの無駄使いを避けるために、暇を持て余すとスリープ状態に入る、というプログラムが組まれていた。

問いに対して、パテルマテルは否定の意思を伝えてきた。
「そう、起きていたのね。よかったわ。」
「さっきのレーヴェのデータをヨシュアにも見せてもらえるかしら。」

パテルマテルが送ってきたのは、アンクレットの写真と、画像データの端についている意味不明の文字列であった。
「ここの部分は普通の画像データであれば、空データとして0を並べていたり、少し特殊なサイズだったりデータ量の多い画像データだとそういった旨の情報が追加されるわ。つまり、特殊なデータだった場合のデータの読み取り方をシステムに伝えるための領域、と思ってもらって結構よ。」
レンが、データ型について簡単にヨシュアに解説をしてくれた。

ヨシュアは唸る。
「つまり、この普通の画像データではここは空データになっているはずの部分ということかな?」
レンは肯定した。
「そうよ。それなのに、こんな意味不明の数字列が書いてあるの。」
「でも、この画像データは読めているんだろう?」
「特殊データタイプの指示が読み取れなければ、とりあえずデフォルト設定で読み込むようにとシステムが設計されているのよ。」
「なるほど。」

「この文字列データに一律に数字を加算したり、乗算することは可能?」
「もちろんよ。とりあえず一般的な暗号化手法としての手法はもうパテルマテルがトライしたわ。」

ヨシュアはふっと思いついた数字を提案する。
「うーん。149817を加算してみて、そこから0017を引く。」
「え、ええ。」
その結果をレンは、じぃっと眺めてみる。
「この数字、下4桁を抜くと、レンのルールでは、7文字の言葉になるわね。」
ヨシュアがびっくりして反応する。
「どういう言葉?」

ちょっと躊躇ってから、レンはそのままの音を口にした。
「『カラマミエルチ』」
「・・・。どういう意味かな。」
「分からないわ。」
レンがお手上げと両手を宙に広げたポーズをとった。
「きっとこの言葉に意味があるんだ。」
確信したかのように、ヨシュアが言う。

「あら、ずいぶんと断言するのね。」
「・・・。さっきの数字は、僕らがほんの小さな子供だったころに、使っていた暗号なんだ。それこそ結社に入るより前にね。」
「そんな頃から数字遊びを?」
「その頃は紙にメッセージを書いたりしていたんだ。大人達に読み取られないようにって、ちょっと夜抜け出したり、子供だけの秘密の話がある時に使う合図だったんだよ。」
ヨシュアは目を細める。
「昔、この数字は僕の姉さんとレーヴェが使っていたんだ。今この数字を知っているのは、きっと僕だけだ。つまり、このデータは僕じゃないと言葉にすることが出来なかった。だけど、パテルマテルに隠されて、しかもレンが自分用に作った暗号化システムの中に隠されていた。」
レンが頷く。
「レンが隠されたデータに気づいて、ヨシュアに相談しないと、このデータは言葉に変換出来なかった、というわけよね。そこまで手間の掛けられた暗号文に意味がないはずがない、ということね。」
ヨシュアは首肯した。
「そうだ。少なくともレーヴェは、そんな凝った遊びをするタイプじゃないだろう。」

改めて、得られた文字を見返してみる。

『カラマミエルチ』

「この言葉、一つの単語じゃないわよね。もしかしたら、文章だったり助詞があるんじゃないのかしら。」
「うん。二つ以上の単語で形成されてはいそうだ。」
「そういえば、『カラマ』って単語に聞き覚えがあるわ。」
「へぇ、どういう意味?」
「意味は詳しく知らないのだけど、今日ティータから聞いた単語なの。アサト諸島で発見された古代遺物は『カラマ・ストーン』と名付けられたそうよ。」
「!」
ヨシュアの顔が驚きの表情を浮かべる。
「随分とタイムリーだね。」
「ええ、そして、この文字が隠されていたアンクレットの写真のデータは、一年前のアサト諸島の記録としてデータベースに置いてあった。今回再訪するために記録を探っていたところで、パテルマテルが気付いたデータなのよ。」
「・・・。つまり、この暗号文の『カラマ』と、アサト諸島のカラマ・ストーンは関係があるということか。」
「そうかもね。もしくは、カラマ・ストーンの語源と、関連性があるのか、かしらね。」
「例の古代遺物が『カラマ・ストーン』と名付けられた背景については、聞いているのかい?」
「少しだけ。詳しくは聞かなかったの。でも、そのあたりが何かヒントになりそうね。アサト諸島に行ったら、何かしらの答えが得られそうな気がしてきたわ。」

ヨシュアは、端末上に浮かぶアンクレットの画像を見つめる。
「カラマというのが、その古代遺物関連の単語だとして、だったら残りの『ミエルチ』という文字には別の意味があるのかな。」
「そうね、そんな気がしてきたわ。『見える』という動詞としてもとれるわね。」
「だったら、最後の『チ』は何だろう。『血』?あとは、『地』、『値』、『池』、『知』・・・・。うーん。『チ』、という一音だとけっこう色々な意味があるなあ。」

「・・・。やっぱり、冒頭の『カラマ』の意味を知るのが、近道みたいね。」
「古代遺物の名前を名付けたのは、発見者の博士なのかい?サイオン博士、とおっしゃったっけ。」
「ええ、そのサイオン博士。教会もすでに立ち会って動作有無は確認しているそうだけど、博士のネーミングと聞いたわ。」
「たしか、地域の伝承で、力のある石についての昔話があって、そこから付けたって聞いたわね。」
「・・・。レーヴェが暗号文自体をカラマ諸島で考えたのだとしたら、その昔話の石を意味しているのかな。」
「分からないわ。まさか、古代遺物が発見されることを予知していたわけじゃあないでしょうし・・・。昔話を指している可能性の方が高そうに感じるわね。」

レンとヨシュアは、顔を見合わせる。
「つまり、その昔話の『カラマ』とやらを調べれば、このメッセージの意味も分かるってことだね。」
「ええ、そうみたいね。」

レンには、アサト諸島での大きな目的が出来た。今やレアリティの高い部品の調達なんてことよりも、この隠されたメッセージの意図を知ることの方が重要であった。レーヴェは一体何をレンとヨシュアに伝えようとしたのだろうか。
「レーヴェの伝言、必ず解いてみせる。」
レンはヨシュアに向って決意する。私達に何を言いたかったのか、それを受け止めることが遺された者の勤めであるように感じたのだ。
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