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(1-5) 動かない古代遺物
そこで受話器の先から、ちょっといいかな、とヨシュアの声が聞こえた。
「もしもし、ヨシュアだけど。」
「ええ。レンよ。」
突然、電話の相手が変わってレンは焦った。
こういう企みに関してはヨシュアの勘はあなどれない。なぜなら、闇取引に関しても裏社会に関しても彼ほど精通している人物も少ないと言えるほどの立場だからである。
「言わなくても、分かっているとは思うけど、夜の街もダメだよ。それから、アマラーダの廃材所も、ブラックマーケットにも手を出さないでね。何かトラブルに巻き込まれて、下手にティータに被害が出たら、ZCFもギルドも困るんだ。」
ホラ。こういう処は相変わらず侮れない。たぶんヨシュアもエステルに隠れて、いろいろなことに手を出しているんだろう。先輩からのアドバイスは真摯に聞くに限る。
「分かってるわ。心配しないで。」
要するに、足をつけるな、トラブルを持ち越すな、という注意であると、レンは受け止めた。
そもそも、首都アマラーダの市街での闇社会の歩き方を一通りレンに教えたのは、ヨシュアとレーヴェなのだ。
歳若い外見の少女が裏課業で生きていくにあたり、最低限の知識は必要不可欠だろうと心配してのご教授であったとは、レンも認識している。レンは、ヨシュアの杞憂が現実とならないために、気をつけなければ、と思った。下手したら、ティータにまで被害が及ぶ。ティータには出来る限り裏社会と無縁で居てもらいたい。その願いはレンにもあるのだった。
最後に、レンは電話をティータに変わってもらい、古代遺物の解析用機材についてなど細かい事情を聞いておいた。
古代遺物についてはレンも興味は大いにある。
動力技術の開発を行うものであれば、誰でも関心はあるだろう。
そもそも現代の動力技術は未だに古代技術の物真似レベルに過ぎない。実験結果から普遍化可能な事象を引き出しているに過ぎず、その理論や応用については今だ発展途上な分野でもあるのだ。蛇にしてもそれは同じ。少なくともレンの理解はその程度だ。引き出せている幅が結社の方が若干先を行けている分野が多いだけである。もちろん、それだけでは説明がつかない事象もあるにはあるが。そこは考察しても解は得られない領域である。
アサト諸島で発掘されたその古代遺物は、発見者の一人でもあるサイオン博士という人物によって、「カラマ・ストーン」と名づけられたらしい。そもそも古くからその地域に伝わる伝説に、そういう名前の力を秘めた石があるのだそうな。発掘された遺物は、その伝説の描写と類似点が見られるために、石碑に記載される遺物ではないのか、と考えられているらしい。ロマンチックなお話である。
そのカラマストーンは、悪い心を封じて人々を幸せに導くことが出来る、救いの石だというのだ。そういった伝説の機能の有無を確認することも含めての今回の解析となるらしい。アサト諸島の研究所には無い機材やノウハウがZCFにはあるらしく、そういった手腕を買われての解析協力依頼となる。
ティータの役目はラッセル博士の持つ古代機構の解析手法の基本を試して、データ取りをすることになる。あまりに、データの読み取りに手間取るようであれば、レマン自治州とツァイスを行き来して忙しいラッセル博士もアサトへ足を運ぶという。その前の下準備がティータに期待されている役割らしい。
そこまでの事情を聞いて、レンは明日の集合場所を首都の国際ターミナルと決めてから、受話器を置いた。
明日までにレンとしても、下準備はしておきたい。
久々の国外である。
レンは気分が高揚していることを自覚した。
そこで受話器の先から、ちょっといいかな、とヨシュアの声が聞こえた。
「もしもし、ヨシュアだけど。」
「ええ。レンよ。」
突然、電話の相手が変わってレンは焦った。
こういう企みに関してはヨシュアの勘はあなどれない。なぜなら、闇取引に関しても裏社会に関しても彼ほど精通している人物も少ないと言えるほどの立場だからである。
「言わなくても、分かっているとは思うけど、夜の街もダメだよ。それから、アマラーダの廃材所も、ブラックマーケットにも手を出さないでね。何かトラブルに巻き込まれて、下手にティータに被害が出たら、ZCFもギルドも困るんだ。」
ホラ。こういう処は相変わらず侮れない。たぶんヨシュアもエステルに隠れて、いろいろなことに手を出しているんだろう。先輩からのアドバイスは真摯に聞くに限る。
「分かってるわ。心配しないで。」
要するに、足をつけるな、トラブルを持ち越すな、という注意であると、レンは受け止めた。
そもそも、首都アマラーダの市街での闇社会の歩き方を一通りレンに教えたのは、ヨシュアとレーヴェなのだ。
歳若い外見の少女が裏課業で生きていくにあたり、最低限の知識は必要不可欠だろうと心配してのご教授であったとは、レンも認識している。レンは、ヨシュアの杞憂が現実とならないために、気をつけなければ、と思った。下手したら、ティータにまで被害が及ぶ。ティータには出来る限り裏社会と無縁で居てもらいたい。その願いはレンにもあるのだった。
最後に、レンは電話をティータに変わってもらい、古代遺物の解析用機材についてなど細かい事情を聞いておいた。
古代遺物についてはレンも興味は大いにある。
動力技術の開発を行うものであれば、誰でも関心はあるだろう。
そもそも現代の動力技術は未だに古代技術の物真似レベルに過ぎない。実験結果から普遍化可能な事象を引き出しているに過ぎず、その理論や応用については今だ発展途上な分野でもあるのだ。蛇にしてもそれは同じ。少なくともレンの理解はその程度だ。引き出せている幅が結社の方が若干先を行けている分野が多いだけである。もちろん、それだけでは説明がつかない事象もあるにはあるが。そこは考察しても解は得られない領域である。
アサト諸島で発掘されたその古代遺物は、発見者の一人でもあるサイオン博士という人物によって、「カラマ・ストーン」と名づけられたらしい。そもそも古くからその地域に伝わる伝説に、そういう名前の力を秘めた石があるのだそうな。発掘された遺物は、その伝説の描写と類似点が見られるために、石碑に記載される遺物ではないのか、と考えられているらしい。ロマンチックなお話である。
そのカラマストーンは、悪い心を封じて人々を幸せに導くことが出来る、救いの石だというのだ。そういった伝説の機能の有無を確認することも含めての今回の解析となるらしい。アサト諸島の研究所には無い機材やノウハウがZCFにはあるらしく、そういった手腕を買われての解析協力依頼となる。
ティータの役目はラッセル博士の持つ古代機構の解析手法の基本を試して、データ取りをすることになる。あまりに、データの読み取りに手間取るようであれば、レマン自治州とツァイスを行き来して忙しいラッセル博士もアサトへ足を運ぶという。その前の下準備がティータに期待されている役割らしい。
そこまでの事情を聞いて、レンは明日の集合場所を首都の国際ターミナルと決めてから、受話器を置いた。
明日までにレンとしても、下準備はしておきたい。
久々の国外である。
レンは気分が高揚していることを自覚した。
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